葦はことわざの中にも出て来るほど古くから親しまれ、
日本の国を「豊葦原(とよあしはら)の国」(日本書紀)
と呼ばれていました。平安時代までは「アシ」と呼ばれ、
今でも「アシ」と呼ぶ地方もありますが、植物学上では、
「ヨシ」(竹と同じイネ科の仲間)と呼ばれています。
 身近なところでは、サイクリング道路の名前・橋名・
町名・サークル名・教室名・コラム名・ホール名・商品名など、今では広く愛称として使われるようになりましたが、葦の利用は人類の文明の起こりまで遡ります。
 今までのよし笛と言えば、ビーっという音がする昔の遊びの「あぶ笛」と呼ばれるものはありましたが、音階にはなりませんでした。
 そこで、1998年、今までになかった菊井式と呼ばれる縦笛の「琵琶湖よし笛」を考案しました。筆者は滋賀の自然遺産ともいうべき琵琶湖畔に自生する葦を巧みに使うことに試行錯誤の中で成功し、葦が自然の楽器になるべき原理を発見しました。
 眼に見える範囲では、頭にスダレの真竹を付け、口元の葦の太さは直径(外径)13ミリが原則、許容範囲として14ミリまで、長さは全長約24センチ・重さ約10グラム(F管仕上げ)と標準方式として定め、現在流通している菊井式よし笛はこの水準と原理に準んじています。
 考案発見のきっかけは、今から20年前に遡ります。筆者が地元の産物と琵琶湖の自然環境にひどく危惧する中、近江八幡で作られているスダレの細い葦と広大に拡がる葦原を見て、この細い植物の管状をうまく使って何とか楽器にしようと挑戦を始めました。元になるのもが何もない中ですから先が全く見えません。幾度も追究実験する中、あるときひょっとしたらこれは楽器になるべき原理(別記)を発見しました。原型がない中原則を発見し、今でもエコに徹し「西の湖」産のスダレの廃材を材料にしています。 ただし、廃材といえどもどこにも使われないだけですからモノは新品です。ですから「琵琶湖よし笛」は自然の原理と風合いに徹し、不自然な人工加工や細工は一切行っていません。植物が自分の声を発するかのような自然摂理を大切にし、音色も研磨するなど人工的に飾っていません。いわば作った綺麗さではなく、素朴で内に秘めた美しさを求め、琵琶湖の原風景を音で表すねらいで制作しています。
 私の制作のきっかけは単純なものです。葦が使用されていることや、琵琶湖の水・自然の保護や恵みの大切さを訴えるため、古琵琶湖層の上に生える地球家族とも呼ぶべき植物の葦の特性(フルート)を世に出し活かしたいという強い思いから、「西の湖」産のよし葦が誕生しました。
 今では、命名された『琵琶湖よし笛』このよし笛は、琵琶湖を代表する地域ブランドで、まさに地域性あふれる素朴な手づくり楽器になり、近年では愛好する演奏サークルが各地に急に増えて来ました。各サークルでは出来ない仕事は皆が手分けして行おうと、「日本よし笛協会」が設立(2006年)され今日に至っています。
 琵琶湖よし笛の構造の特徴は、2006年の特許公開で示していますが、音源と音階の二つの部分に分かれ、まず音源があり次の段階で音階が生まれます。
 それは、葦の原点である風のある原風景を基本とし、温度に敏感で弾力性のある柔らかい葦ならではの、材質が弱くても最も自然な音色を基本としています。シチリキなど葦を使う楽器が「リード楽器」と呼ばれるように、自然の葦そのままの楽器で、まさしく琵琶湖の自然環境にふさわしい民俗楽器となりました。その音色は、サラサラとした渓流のせせらぎが豊かに感じられ、音楽に表現されると癒しを聞くように心が洗われるといつも評価いただき、癒し系のクリスタルアルファー音のように澄んで非常に優しくおだやかで、命の源と自然の響きを最も大切にしています。
 世界には非常に多くの民俗楽器がありますが、一本の葦で色々な曲が演奏でき、葦自身が音色を放つ縦笛形式のよし笛はかつてありませんでした。押さえればすぐにでもつぶれそうな非常に細い葦が、このようなしっかりした音程を発するとは誰も想像しなかったからではないでしょうか。
 日本産の形がよく似たものに、横笛式の竹製ですが、葦よりももっと太い雅楽で用いられるヒチリキや、篠笛・龍笛・尺八などがあります。琵琶湖よし笛は、演奏のし易さをカバーするため、細い葦に安定して空気を送り込むための、葦に最も相性の合うスダレの竹(イネ科)のマウスピースを口元に備え、空気を吹き込めば誰でもいとも簡単に出せるよう考案しましたので、楽器の経験を問わず誰でも簡単に演奏できますので一度お試しください。
 琵琶湖よし笛の演奏サ−クルであるレイクリードは、サークル育成のほかイベントなどの趣旨に合わせ、自然環境に関する講演やコンサートを積極的に行っていますのでお気軽にお声掛けください。よし笛は1オクターブ半以上と幅が広く、唱歌・想い出の曲から歌謡曲・小クラシック音楽に至るまで、曲想豊かに音楽を楽しむことができます。 よし笛は、自然の響きを最も大切にしていますから、琵琶湖の自然環境などを考える上で大切な楽器と言えるのではないでしょうか。


 
よし笛の発祥誕生記(概略)